坊ちゃん/夏目漱石のあらすじ・ネタバレ・感想
登場人物
坊っちゃん(おれ):物語の主人公。短気で無鉄砲な性格。
清:坊っちゃんの家で働くお婆さん。坊っちゃんを唯一可愛がってくれる人。
堀田:赴任先の同僚。本作中では「山嵐」と称される。
教頭:上品な立ち居振る舞いの男性。本作中では「赤シャツ」と称される。
吉川:校長や教頭に媚びへつらう一教師。本作中では「野だいこ/野だ」と称される。
あらすじ
短気で癇癪持ちで曲がったことが大嫌いな「坊っちゃん」は、父の死後、兄に分けてもらったいくらかのお金を使って学校へ通った。「坊っちゃん」は卒業後、先生の薦めで四国の中学校に教員として赴任した。
赴任先の中学校で巻き起こる、意地の悪い先生達への痛快な反逆劇を描いた物語。
ネタバレ
短気で癇癪持ちである主人公「坊っちゃん」は、小さい頃から何かと問題を起こしては周囲に邪険に扱われていた。しかし、この坊っちゃんのことを唯一可愛がってくれる人がいた。それが、下女の清であった。
清は、坊っちゃんのまっすぐで裏表のない性格を褒め、贔屓してくれた。
両親が死んだ後、兄が遺産の一部を坊っちゃんに寄越した。それ以来兄とはあっていない。
清は叔父のもとでお世話になるといい、離れて暮らすことになった。
坊っちゃんは兄が分けてくれた少しの金で学校へ通った。満足のいくように学を得ないうちに3年が経過して、すぐ卒業となった。
特に考えもなかった坊っちゃんは、先生の手引きで四国の松山中学に教師として赴任することになった。
赴任先の四国で、坊っちゃんは窮屈な思いをして過ごすことになる。宿泊先のホテルは蒸し暑く、騒がしくて寝られやしない。
学校では、狸のような校長に、女のような喋り方をする教頭、山嵐のようにけたたましい数学教師の堀田など、個性的な教師達と関わらなければならなかった。生徒達はしょっちゅう坊っちゃんをからかい、(田舎特有の情報網で)昨晩食べたものや行動などを冷やかされた。
そんなある日、宿直当番になった坊っちゃんが生徒達のいたずらに遭った。激昂した坊っちゃんが翌朝、生徒達を並べて説教していたところに狸ーもとい校長がやってきて、事情を聞いた末に生徒達を解放してしまった。この手ぬるい指導に納得のいかない坊っちゃんは強気に校長に噛み付いたが、冷やかされて終わってしまう。
ある日、赤シャツー教頭に釣りに誘われた。負けん気の強い坊っちゃんはこの誘いに乗って、赤シャツと、(赤シャツの金魚のフン)野だいこと3人で沖釣りに出た。
赤シャツと野だが終始気に入らない坊っちゃんだったが、釣りの帰りに赤シャツに「堀田に気をつけて」と忠告をうける。
堀田とは坊ちゃんが山嵐とあだ名をつけた同僚であり、同じ数学教師ということで坊っちゃんの世話を焼いてくれた人であった。
翌日、山嵐が今の下宿先を出るように言ってきた。「横柄な態度に困っている」と相談を受けたそうだが、心当たりのない坊っちゃんは山嵐と言い合いになってしまった。
しかし、その後の宿直の事件についての会議では坊っちゃんを庇うなど、敵とも味方とも分からぬまま、山嵐とは口を聞かない日が続いた。
ある日、坊っちゃんは赤シャツから呼び出された。なんでも、うらなり君(古賀先生)が宮崎の学校へ転勤するから、坊っちゃんの給金を上げる、という。
納得して帰宅した後、下宿先のおばさんにこの話をすると、うらなり君は転勤を望んでなどおらず、半ば無理やり飛ばされるらしいことが明らかになった。
翌日、学校に行くと山嵐が以前の下宿先について、とんだ言いがかりであったと謝罪してきた。そして2人の仲は以前よりも深まった。
山嵐は、うらなり君の異動は赤シャツの差し金であると睨んでいた。うらなり君のフィアンセを横取りした赤シャツは、さらにうらなり君を遠い地へ追い出すことで、とうとうこのフィアンセを自分のものにしようとたくらんでいるのだ。
そしてある日、決定的な事件が起こった。赤シャツの弟の誘いで街に出た坊っちゃんと山嵐は、師範学校と中学校の抗争に出くわした。
教師である2人はこれを止めようと割って入って、かえってぼこぼこにされてしまった。
翌日の朝刊で、2人について書かれた記事が出た。内容は2人を非難するようなもので、山嵐と坊っちゃんは撤回を申し入れたが、校長や赤シャツ(教頭)はまともに取り合わなかった。
この事件に伴って山嵐が解雇された。自分のいう通りにならない山嵐を、赤シャツが追い出そうとしたのである。
確信を持った山嵐と坊っちゃんは、赤シャツの悪事を暴いてとっちめてやることにした。宿屋兼料理屋に張り込んで、現場を抑えようという計画であった。
張り込みを初めて8日目の夜、漸く赤シャツと野だが現れた。2人が宿屋兼料理屋(簡単に言うとラブホテルのようなもの)から出てきたところへ躍り出て、殴りつけたり、卵を投げ付けたりした。
その後赤シャツや野だは2人を訴えたり出頭はしなかった。
坊っちゃんはこの後、東京へ戻って鉄道会社で働いた。そして、小さいが自分の家を持ち、清と暮らした。
感想
優しいお婆さん、清の存在
この「坊っちゃん」という物語は、坊っちゃんの視点で描かれています。
短気で怒りっぽい、無鉄砲…と、この主人公坊っちゃんもなかなかにアクの強い人物。坊っちゃんの短絡的な様を、夏目漱石は見事に描き出しています。
典型的な、小学校の時とかにいた、乱暴ですぐに手が出る問題児タイプの人ですね。
そんな坊っちゃんを、下女の清は可愛がり続けます。
幼少期はそんな清を不思議に思う坊ちゃんでしたが、独り立ちしてから上手くいかないことがあると、清のことを思い浮かべています。
両親や兄にまで邪険に扱われた坊っちゃんにとって、清は大変特別な存在であったことでしょう。
物語に直接関わるわけではありませんが、清の存在が「坊っちゃん」という物語にあたたかみを与えています。
黒幕は誰?
この物語の面白いところは、周りの狡猾な人間達に翻弄される坊っちゃんの心理描写です。
読者からしてみれば、怪しいのは明らかに赤シャツと野だいこ。なのに、赤シャツのミスリードによって坊っちゃんは気の良い同僚である山嵐を疑い始めてしまいます。
坊っちゃんの無鉄砲さが、この揺れ動く心理描写でありありと描かれています。
坊っちゃんの真っ直ぐすぎるゆえに人を信じすぎてしまうところに、少しほっこりしつつ、もどかしさもおぼえます。
また、田舎出身の人にも是非読んで欲しいです。
田舎特有の情報網、ケチ臭さ、芋っぽさ…
私自身瀬戸内の田舎で生まれ育ったので、なんだかどきっとするところも。
この物語では、最後に赤シャツと野だいこをこらしめて終わる訳ですが、この物語の本当の黒幕は田舎の持つ雰囲気そのものなのかも、とおもったりしてしまいました。
よそ者を嫌い、変化を嫌う雰囲気が、坊っちゃんを受け入れなかったのではないかな…と。
おわりに
「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。」という一節で始まる物語。
「坊っちゃん」って結局どんな物語なの?と聞かれるととても難しいように思います。
一応、勧善懲悪の物語、ということになっていますが「え、そんなもんでいいの?もっと社会的に抹殺しないの?」なんて思ってしまうラスト、、、。
私個人としては、清という人物こそ、この物語で描きたかったものなのではないか、と思います。
夏目漱石の未完の作品、「明暗」に出てくる「清子」と言う女性ともなにか関係があるのかも…そんな考察をしながら文学作品に触れるのもいいかもしれません。
【超初心者向け】GitHubの使い方
この記事の対象
・GitHubでファイルを管理したいけど、どうせならターミナルから操作したい
・共同開発に向けて少しづつGitHubに慣れていきたい
・GitHubで個人のファイルを管理したい(他の人と共同開発はしない)
・いろいろなサイトをみてやってみたけど何を言ってるのかわからない
・ターミナルは使えるけどgitとかわからない・・・
・ITスキルを身に付けようと孤軍奮闘している人
など、とにかく「GitHubをターミナル経由で(1人で)使いたい」という人向けです。ここでは、Gitの仕組みや詳しい説明はしていません!(追々説明できるようになりたい所存です)
共同開発やバージョン管理なんてワードもでてきません!
ここでは、私に課せられた最初のミッション「GitHubにファイルをプッシュする」をやり遂げるまでの軌跡をメモ程度に記しております。
ターミナルを使って、GitHubにファイルをpushするまでの一連の作業
⓪gitをインストールする
まずはgitをインストールします。こちらは、「git インストール」で検索するとそれぞれのOSに対応したインストール方法を説明してくださっているサイトがたくさん出てきますので、それらを参考にしてください。
①ターミナルでgitに触ってみる
git --version
と入力してみましょう。バージョンが表示されたら、gitはインストールされています。おめでとうございます。
②ssh公開鍵・秘密鍵を入手して、GitHubに「公開鍵」を入力
「GitHubでssh接続する手順~公開鍵・秘密鍵の生成から~」
https://qiita.com/shizuma/items/2b2f873a0034839e47ce
を参照してください。すごくわかりやすくまとめられています。さらに超初心者向けに補足を行うと、
・いかにも入力すべきみたいなターンがありますがマジで無視してEnterです
・「titleに公開鍵名」とありますが、公開鍵名は任意に入力していいです。「え、公開鍵名なんて設定してない!」と思った人へ一応。
・秘密鍵は絶対に入力してはいけません。
上記三点を注意して、公開鍵を登録しましょう。(他力本願ですみません)
③作業中フォルダを選択or作成
ターミナルで、作業用のフォルダを作ります。
以降このフォルダに共有したいファイルを入れて、GitHubに送る形になります。つまり、このフォルダがGitHubとの橋渡しをするフォルダになります!(初心者はここを見落としてしまい、二回目以降ファイルがpushできない・・・ってことが起こりがちなので注意です)
mkdir フォルダ名
でフォルダを作成し、
cd フォルダ名
でそのフォルダ内に移動(確認のためpwdと入力してみてもいいです!)して、次に進んでください。
④GitHubのリポジトリ画面からコマンドを入手
GitHubのリポジトリにはいると上の画像のようなものがあるはずです。ある人は、...or create a new のしたのecho "#以下をコピーしてターミナルにペースト。
もし上の画像が表示されていない人がいたら、以下のア・イに独自の情報を入力して、ターミナルで実行してみてください。
echo "# ア" >> README.md
git init
git add README.md
git commit -m "first commit"
git remote add origin git@github.com:イ.git
git push -u origin master
ア:リポジトリ名(#の後ろに半角スペースあります!)
イ:...上位の階層/リポジトリ名
⑤リポジトリで確認
ウェブでリポジトリを再読み込みしてみてください。commitにREADME.mdが追加されていたらOKです。
以後、pushしたいファイルがあれば、そのファイルを上記の作業を行ったフォルダに入れて、以下のコマンドを入力します。
git add ファイル名
git commit -m "メッセージ" (pushしたファイルの説明です。変更点などを短く記載します)
git push origin master
こうすれば、ファイルがpushされています。
あとがき
今回はただ単にGitHubにターミナルを使ってファイルをpushしたい!という目的だったので、共同開発を試みている人には向いていません・・・。
同じような状況の人の助けに少しでもなるといいな、と思いつくりました。今後は共同開発に向けたGitHubの使い方なども「超初心者向け」に超初心者目線で共有していきたいと思います。
では、良いエンジニアライフを。
参考:
・「GitHubでssh接続する手順~公開鍵・秘密鍵の生成から~」(2018/12/05)https://qiita.com/shizuma/items/2b2f873a0034839e47ce
・progate (Gitコース)
こころ/夏目漱石のあらすじ・ネタバレ・感想
登場人物
私:田舎出身の大学生。鎌倉で出会った不思議な男性を「先生」と呼び慕う。 先生:私が慕う、どこか影を感じさせる男性。 奥さん:先生の奥さん。先生の下宿先のひとり娘だった。 K:先生の幼馴染。大学生の時に自ら命を絶った。
あらすじ
東京に上京してきた私が、「先生」と出会い、言葉を交わす中で、「先生」の闇を垣間見る。 実家の父の病状が優れないため、地元へ戻った私の元へ、先生から長い手紙が届けられた。その手紙には先生の過去への懺悔と、別れの言葉が綴られていた。 本編は「上 先生と私」「中 両親と私」「下 先生と遺書」の三章から成る。
内容・ネタバレ
上 先生と私
辺鄙な田舎から上京してきた私は、鎌倉である一人の男性と出会った。私はその男性に会うために、毎日同じ時間に同じ場所に行き、遂にその男性ー先生と懇意になった。 東京に戻った私はすぐに先生のお宅に伺い、以来足繁く先生の家に通った。先生は奥さんとお手伝いさんと3人で暮らしていた。奥さんはとても美しい人で、落ち着いた女性だった。 私は大学の講義の間でさえ、先生に会いたくてたまらなくなっていた。
先生は毎月決まって雑司ヶ谷の霊園に行っていた。私が誰の墓なのか尋ねても、先生は答えようとしなかった。先生はあまり自分のことを話さなかった。野心がなく、言葉を選ばず言えば、つまらない人間だった。それでも私は、なぜか先生という人間に惹かれるのであった。 先生は、私の父の病気のことと、お金のことを仕切りに気にしていた。先生は金が関わると人間は悪になると、私に述べた。 また先生は、ある日奥さんに、「どっちが先へ死ぬだろう」と聞いた。そして、自分が死んだら…などと縁起の悪いことを言って、奥さんにたしなめられていた。 学位を得た私は実家から、父親の病状がいよいよ良くないらしいという旨の手紙を受け取った。 そのため、先生と奥さんに暇を申し上げて、9月まで戻らないだろうと伝えて別れた。
中 両親と私
父親の病状は思っていたよりも悪くはなく、私は拍子抜けしてしまった。そんなある日、明治天皇が亡くなられたというニュースが入ってきて、以来父は塞ぎ込んでしまった。 私は母に言われて先生へ手紙を書いていた。しかし手紙の返事は1度も来ていなかった。 そろそろ東京へ戻ろうという時に、父が倒れた。私は東京に戻れなくなってしまった。 兄や妹の旦那さんに手紙をやって、集まってもらった。父の病状は悪く、いつ死ぬやも分からないところだった。 そんなある日、突然先生からちょっと会いたいが来られるか、という旨の電報が届いた。父の状態が悪いため私はやむなく「まだ帰れそうにない」という電報を返した。 後日、先生から手紙が届いた。開くと中には、たくさんの便箋が入っていた。書き出しをみて妙な胸騒ぎを感じた私は、ひっそりと実家を出て東京行きの電車に飛び乗った。そして、先生からの手紙をまた開いて、初めから読み始めた。
下 先生と遺書
私が受け取った先生からの手紙は、遺書であった。そこには先生が変わってしまったわけ、毎月足を運んでいるあの墓に眠る人について、記されていた。 先生は幼い頃に両親を失っていた。以降叔父の元で育った先生は、大学生になった頃に、両親の遺した遺産を叔父が使い倒しているらしいことを知って離縁を申し出た。 生活に困らない程度のお金を持って東京で暮らし始めた先生は、軍人の未亡人が営む下宿にお世話になることになった。そこには未亡人である奥さんと、娘が1人、下女の3人が暮らしていた。 先生はその娘さんに恋をしていた。また奥さんも、先生と娘をくっつけようとしているようにも思われた。
先生にはKという幼馴染がいた。Kもまた、両親から離縁され、お金を持たず孤独であった。先生は、すっかり精神を病んでしまったKを自身の下宿先へ迎え入れた。 以来Kの精神は日に日に良くなった。しかし一方でまた、娘さんとも親しげにしている様子が先生には気に食わなかった。 ある日Kは先生に、娘さんのことが好きだ、と打ち明けた。先生は自分もそうだ、と言おうとして、ついに言い出せなかった。
その後何日もKに気持ちを打ち明けられなかった先生は、ある日仮病を使って講義を休んだ。そして、Kと娘さんが居ない昼間に「奥さんに娘さんを嫁にください」と言ったのだった。奥さんはこの申し出を快諾した。 しかし先生はついに、Kに自分と娘さんとの結婚について話さなかった。 奥さんの口から結婚を知らされた時にKはただ静かに祝福の言葉を述べた。 Kが先生を責めることはなかった。 そしてある晩、先生はふと違和感を感じてKの部屋を覗いた。そこでKは自ら命を絶っていた。先生はとっさに机上の遺書に目を通した。そこには自分の娘さんへの思いや、先生への怒りは述べられておらずただただ謝罪が並べられていた。ほっとした先生はその手紙を元あったように戻すと、奥さんと下女を呼んだ。
先生は手紙の最後で、乃木大将の殉死に感化されたため自らも死ぬのだ、と述べた。 乃木大将は35年もの間、死のう死のうと思い生き続けた。そして、明治天皇が亡くなられた際に明治の精神とともに自らの腹に刃を突き立てた。 死のう死のうと思い生き続けた35年と、腹に刃を突き立てた一瞬のどっちが苦しかっただろう。 先生は、そう考えた。そして、自殺を決意したのだった。
感想
先生に惹かれる私
この物語の「私」はきっと先生に恋をしています。どこか影のある、不思議な雰囲気を持った先生に異常なまでに惹かれています。 恋をしたことがない私は、先生へのこの気持ちをよくわかっていません。しかし先生は、それも一種の恋心であろう、と指摘します。 この恋心というのは、本編に直接的に影響はありません。ただ、男性である私が、同じく男性である先生に惹かれたことによって、この物語は始まるのです。
美しい奥さん
先生の奥さんはとても美しい人らしいです。整った顔立ちや愛嬌のある性格が、描写からうかがえます。 Kのことさえ無ければ、思い合う男女が結ばれた素敵なお話しであったに違いありません。 先生の奥さんはKの自殺の本当の理由を知りません。そしてこれからも、知らないまま1人で生きていくのでしょう。 奥さんの寂しさと、それにこたえてあげることのできない先生になんとも切ない気持ちになります。
私と先生の出会い
私は、夏目漱石の「こころ」を何度も読んでいますがいつも思うことがあります。 「もし、私と先生が出会っていなければ、先生は死ななかっただろうか。」
ここからは個人的な見解ですが、おそらく先生は「私」に出会わなくても同じタイミングで死んでいただろうと思います。先生は乃木大将の死に感化されて死を決意しています。これは「私」に出会っていても出会っていなくても変わらないはずです。 ただ、先生にとって「私」との出会いは意味のあるものだったと思います。 しつこいくらいにつきまとっていた「私」がいてくれたからこそ、先生は罪の告白をして、死ぬことができたのです。 罪を隠したまま死ぬことは先生にとってもつらいものだったでしょう。 「私」は先生の重荷を少しばかり預かったのです。
Kの死について
Kはなぜ死んでしまったのか、初めて読んだときは(国語の教科書だったので抜粋されていたこともあり)よくわかりませんでした。 好きな女の子を取られちゃったくらいで死ぬことないのに!と思った記憶があります。 しかし全て読むと、Kの死は至極当たり前にやってきます。
Kは「親友」と「愛する人」を同時に失うことになります。宗教の道を志していたKはまた、恋という煩悩にうつつをぬかすことに、抗ってもいたようです。 道に反してまで貫こうとした恋心と、心の底から信頼していた友を同時に失ったKが死を選ぶことは、想像に難くないのです。 先生の視点で語られる先生の物語は、とても残酷です。
さいごに
夏目漱石の「こころ」は言わずと知れた名作で、国語の教科書にも教材として(「下 先生と遺書」の一部が)収録されていたりします。そのため、名前は知っていたり、国語の教科書の部分だけぼんやり覚えていたり、という人が多いと思います。尤も、好きな人はかなり熱狂的に好きな印象ですが。
全編読むと、一部を読んだときとはまた一味違った印象を持ちます。文量が多いので読み切るのには少し時間がかかるかもしれませんが、近代文学のなかでは外せない作品です! 夏目漱石の「こころ」、少しでも興味を持っていただければ幸いです。
桐島、部活やめるってよ/朝井リョウのあらすじ・ネタバレ・感想
僕たちが欲しいのは、僕たちが持っていないもの。
登場人物
菊池宏樹:野球部の幽霊部員。スポーツ万能で容姿も整っており、可愛い彼女を持つ。いわゆる「上」の人間。沙奈の彼氏。
小泉風助:桐島と同じバレーボール部のリベロ。キャプテンである桐島がいるうちは常に補欠だったが、桐島の退部によりスタメンを勝ち取る。
孝介:バレー部の副キャプテン。実果の彼氏。
沢島亜矢:ブラスバンド部の部長。同じクラスの竜汰に密かに思いを寄せる。
前田涼也:映画部に所属する。いわゆる「下」の人間。
武文:前田と同じく映画部に所属する。同じく「下」の人間。
宮部実果:ソフトボール部に所属する。四番を夢見て練習に励む。孝介の彼女。
実果の母:実果の父の再婚によって出来た義母。父と、実の娘であるカオリの死後、実果をカオリと勘違いしている。
沙奈:いわゆる「上」の人間。宏樹の彼女。
東原かすみ:バドミントン部に所属する。映画好き。前田と同じ中学だった。竜汰の彼女。
あらすじ
ある日突然、バレー部のキャプテン・桐島が部活をやめた。
桐島が部活を辞めるという事件によって起こった小さな波紋は、部活を超えてたくさんの人たちに影響を及ぼしていく。
バレー部員、ブラスバンド部、ソフトボール部、映画部、野球部。それぞれの視点でそれぞれ物語が綴られる。
内容・ネタバレ
菊池宏樹
同じクラスの竜汰と自転車で二人乗りして帰る道中、バレー部を辞めるらしい桐島について話していた。
「十七歳の俺たちは思ったことをそのまま言葉にする。」
きっと、桐島が部活を辞めることになっているのも、思ったことをつい口に出して、それが誰かの耳に入って広まっただけだろう。そう宏樹は考えていた。
小泉風助
バレー部のキャプテン桐島が部活を辞めたことで、桐島と同じポジションの風助が次の試合でスタメン入りすることが決まった。
風助は、スタメンが嬉しい反面、桐島が辞めてしまったことが気がかりで喜べずにいた。
副キャプテンの孝介は「次の試合はおれがキャプテンかー!」など気楽に言っていたが、風助はどうしても、素直に喜べなかった。
風助は、桐島が辞めた理由になんとなく気がついていた。
特別何かあったわけではなく、ただ、キャプテンとして厳しい言葉を部員にぶつける桐島に部員達が距離を置き始めたのだった。
桐島がいない初めての試合。風助は思ったように動けないでいた。そんな時、桐島がいつもやっていたことをまねてみる。
タイムアウトが終わった。次の一本、風助はボールに集中した。
沢島亜矢
ブラスバンド部の部長である亜矢は、古びたバスケットゴールで遊ぶ男子たちの中の1人に恋していた。同じクラスの竜汰だった。
ある日、いつも練習をする場所から見えるはずの男子の集団はいなかった。そのせいで練習に身が入らない亜矢。そんな亜矢を同期の詩織は気にかけていた。
翌日、同じクラスのいつメン・志乃と他愛ない話をしているところに、竜汰がちゃちゃを入れてきた。数言交わして竜汰が去っていった後、志乃は「竜汰いいよね。」と口にした。亜矢は咄嗟に「応援するよ。」と口をついてしまった。
モヤモヤした気持ちを抱えたまま部活に向かう。コンクールまであと4日。「もっと練習したい!」と思う部員たちは部活の後、カラオケに行って練習をしようと盛り上がった。しかし、すぐに見つかり、全員追い出されてしまう。
翌日、亜矢はその話を志乃にしていた。すると志乃は突然「竜汰彼女いるんだって」となんとなしに亜矢に告げる。自分の恋心を隠していた亜矢はなんとも反応することができなかった。
その日、部室に一番乗りで行った亜矢は竜汰について考えていた。
いつから目で追うようになったんだっけ。
いつから本気で好きになったんだろう。
「彼女がいるなら、大声で友達とその話をしていて欲しかった。」なんて考えたりもした。
コンクールまで後3日。亜矢は部室を真っ暗にして、バスケットゴールを見てしまわないようにして、
"泣くな、私。"
と自分を鼓舞した。
前田涼也
映画部の前田は、クラスでも地味なほうで、運動もできなければ見た目もどこか垢抜けない。休み時間はいつも同じ映画部の武文と映画について熱く語り合っていた。
前田はいわゆる「下」の人間だと自覚していた。運動部のキラキラした人たちに許されることは、自分には許されない、と。
そんな前田の所属する映画部が映画のコンクールで賞を獲った。
全校集会、みんなの前でタイトルが読み上げられる。
「陽炎〜いつまでも君を待つ〜」
その小っ恥ずかしいタイトルに嘲笑が起こる。茶化す男子生徒もいた。
前田はその嘲笑に気がつかないフリをした。
前田は体育が嫌いだった。「上」と「下」が顕著になる科目だから。
体育のサッカーでは試合をした。前田は審判をするフリをして試合を眺めていた。片方のチームには武文がいた。
試合中、武文の元へパスが回ってきた。武文は盛大にヘマをしたが、誰もそのことには触れなかった。グラウンド中すべてのため息が武文に集まった、そんな気がしていた。
昼休み、購買でパンを買うために並び武文と話していると、後方から「上」の女子達の話し声が聞こえてきた。それは、体育の時間の武文の失敗への悪口だった。
前田と武文は必死に聞こえないフリをして話し続けた。しかし、女子達の悪口は止まらない。そんな中、そのグループの1人かすみが「私映画好きだよ。」と言った。
中学の頃、かすみが前田に言った言葉とリンクする。中学の頃、前田は「上」でも「下」でもなく、ただ純粋に映画が好きだった。そして同じく映画好きのかすみとよく一緒に映画を観に行っていた。
数日後、武文は「青春モノの映画を撮ろう!」と提案してきた。
カメラを持って体育館に行くと、そこにいるはずのバレーボール部はおらず、かすみの所属するバドミントン部がいた。
「桐島くんが頼みにきていたからバレーボール部に体育館を譲っていたけど、桐島くん来なくなっちゃって。だから前までと同じように交代制で使ってるんだよ。」とバドミントン部の顧問の先生は教えてくれた。
前田達はバドミントン部にカメラを向けた。嘲笑する部員もいる中、かすみだけはいつも通り、練習していた。
今日撮ったものがとてもいいものになったら、かすみにそれを伝えよう。
前田は密かにそう思った。
宮部実果
実果は梨沙・沙奈・かすみと同じグループに属していた。いつもは桐島と付き合っている梨沙と一緒に、バレー部の部室まで彼氏である孝介を迎えに行っていた。
実果は母と二人暮らしで、母はよくカオリの好物であるカレーを作った。
実果は小さい頃、父と二人暮らしだった。その後、父は現在の母と再婚し、その母の連れ子であるカオリと姉妹になった。
なんでもよくできるカオリは、実果と同じソフトボール部で四番だった。勉強もよくできるカオリは実果の憧れだった。
しかし突然、カオリの受験の日、カオリと父は交通事故に遭い亡くなってしまう。
以来母は精神を病んでしまう。宛先のない手紙を出すようになり、実果をカオリだと思い込むようになった。
自分は実果であるのに、母にはっきりと言えない自分にやりきれなさを感じながらも、家に帰るといつも「カオリ」を演じる。
ある日クラスのいつメンと購買に並んでいる際に友人の梨沙・沙奈が映画部の悪口を言い始める。その後も教室で映画部のことを悪く言う2人に心の中で実果は悪態をつくも何も言えなかった。
その日の部活中、不意に実果は、母親に実果として認められたいと言う感情が溢れてくる。
部活を抜け出して帰路についた実果は道中ふと携帯をみると、今日が母の誕生日であることに気が付く。道中、花屋さんで花束を作りメッセージカードを記入する時、自分が母親の年齢を知らないことに気が付く。
「自分の方がお母さんと向き合えていなかったのかもしれない。」
家に帰ると今日もまたポストには宛先のない手紙が帰ってきていた。
実果は母に花束を渡し、思い切って母にその手紙について尋ねると、母はこの手紙は夫と、(母の中ではいなくなってしまったことになっている)実果に宛てた手紙だと明かした。
母はちゃんと実果も愛してくれていた。
そう気がついた実果はトイレに駆け込み涙を流した。
そして、カオリからも、部活のライバルからも四番を奪ってやろうと意気込んだ。
その日の夜ご飯はカオリが大好きだったカレーをリクエストした。
菊池宏樹
夏休み明けの全校集会。くだらないことを考えながら表彰式を眺めていた。
映画部の表彰。正直イタイタイトルだったけど、宏樹にとってはどうでもよかった。
運動も勉強もできて、顔も悪くない。沙奈という可愛い彼女もいる。
宏樹は野球部に所属していたが、あまり(といよりほとんど)部活に顔を出すことはなかった。野球部のキャプテンが、試合だけでも来てくれ、と頭を下げに来た時には「この人にはプライドとかないのか?」なんて思ったりしていた。
いつものように部活を休んで彼女の沙奈と帰っていた。
俺の彼女はかわいい。確かにかわいい。
だけどたぶん、それだけだ。
沙奈は話し続ける。そしてサッカーの授業のことを話し始めた。宏樹や宏樹の友人達はかっこいい。逆に映画部の奴らはダサい。
その発言に宏樹はなんとなくモヤモヤしてしまう。
沙奈の、他人をダサいかダサくないかで判断してランク付けする価値観をかわいそうだな、と感じる宏樹は「いや自分だってそうだ。」と思った。
ある日、サッカーの授業中に、宏樹はふと同じクラスの地味なやつにパスを出した。そいつ(前田)はヘマをしてしまったが、誰もそいつには何も言わなかった。
授業終わり、宏樹はそいつに声をかけようと思った時、そいつのもとへもう1人の映画部の奴が声をかけた。その瞬間、前田の目が輝いたように見えた。
どんな扱いを受けて、嫌なことがあっても、そんなことどうでもよくなるくらい大事なものがあることを、宏樹は少し羨ましく思った。
その日、彼女の沙奈に「今日うち親いないから、放課後うちに来ていいよ。」と誘われた。いつも通り、放課後門で集合する約束をして一旦分かれた。
すると下駄箱のところで、野球部のキャプテンが声をかけてきた。「明日試合なんだ。」そうキャプテンは言った。試合だけでも来てくれ、と頼まれていたのに、とうとう宏樹は呼ばれなかった。
そのことが胸につっかえて悲しい気持ちになっていた宏樹は、映画部の2人が楽しそうにカメラを持って体育館に向かっていくのを見つけた。道中、前田がカメラの蓋を落としたのを拾い上げ、前田に渡そうとする。
しかし宏樹はなぜか、前田に話しかけるのに手に汗をかいて緊張する。やっと肩を叩いてぶっきらぼうに蓋を渡すことができた。
その時、体育の時前田に声をかけようとした自分と、野球部のキャプテンとが重なった。自分は前田を「かわいそう」だと思って声をかけようとした。野球部のキャプテンも自分を「かわいそう」と思ったんだろう、と。
自分は本気でやって何もできないことを恐れていた。
そう気づいた宏樹は次桐島に会ったら、部活をやめるなと言ってやろうと思った。
そして、沙奈と待ち合わせた門、とは反対側に向かって歩いた。
東原かすみ〜14歳
かすみが中学生の時の話。
かすみは中学校の違う美紀と友未という友達がいた。
かすみはヨーグルト味が好きで、バドミントンの練習の後はいつもヨーグルト味のアイスを食べていた。しかし美紀は「雑誌でアミリーがヨーグルトは太るって言っていたから、ヨーグルトは食べない」と言った。
かすみは、それなら自分も食べるのやめようかな、と思う。そこへ友未がやってきた。「ヨーグルト、好きだね。」というとかすみはその話を友未にも話した。
「だから、ヨーグルトやめようかな。」というかすみに友未は、「好きなら食べたらいいと思う。」と伝える。
中学校のクラスでは、男子と女子が不仲でなんとなく亀裂があった。映画が大好きなかすみは同じクラスの前田と映画の話をしたい、と思っていたが声をかけられずにいた。
その頃、かすみはなんとなく、美紀と友未が最近不仲なのに気がついていた。友未と一緒に好きな映画を借りに行った時にそのことについて尋ねたがあまりはっきりとは答えてもらえなかった。
友未の中学と練習試合の日、かすみは友未の動きがいつもより良くないことを気にかけていた。練習試合後、友未がボトルを洗っていたのでかすみが近づくと、そこには大量のボトルが並んでいた。
友未は部活で虐められていて、雑用のようなことをさせられていたのだった。
「私といたらかすみちゃんもダサいと思われるよ。」
と友未は言ったが、かすみは「私今でもヨーグルト食べるよ。友未のことも好きだから、話すよ。」と言った。
自分が好きだから。
大事な原動力に気がついたかすみは、今度同じクラスの前田にも声をかけようと決意したのだった。
感想
きっと誰かに共感できる
「桐島、部活やめるってよ」にはいろんな登場人物のそれぞれの視点で紡がれています。
カースト「上」の人も「下」の人も、体育会系も文化系も、女子も男子も。きっと誰かに通ずるものがあるのではないでしょうか。
自分が高校生の時に抱いていたモヤモヤが詰まっているのがこの「桐島、部活やめるってよ」だと思います。読んだ後の虚無感。いやある意味充足感かもしれないこの感じはクセになります。
誰が正しいわけでもない、誰が良いわけでもない。
(ただ、個人的には梨沙とか沙奈は本物のバカというか、マジなんも考えてないやつって描かれ方な気がする。朝井リョウさんの嫌いな女像なんかな、とか思いました。自分の心が汚いだけかな。)
映画だと主人公とかがいて役によって比重が違ったりするのですが、小説だと皆が主人公です。誰の物語でもない。だからこそ、タイトルには本編に一度も登場しない"桐島"を用いたんじゃないでしょうか。
自分の高校生活を振り返ったり
もう全国の高校生は今すぐ読んで!って感じです。
「桐島、部活辞めるってよ」は高校生の"スクールカースト"を描いた作品です。大学4年生の私でも、読んだあと世界が変わりました。(なんならこれを読んでブログ開設に至りました…。)
宏樹の話ではドキッとしました。何かに夢中になって輝いている人にすごく腹が立つあの感じ、すごくわかるぞ〜って話しかけてしまう。
高校時代の私は、仲のいい友人達と遊んで騒いで、メイクとかして、好きでもないバンドのライブに行ってみたりして、とても楽しい3年間を過ごしました。
でもどこか物足りなさを感じていました。
中学の時、部活仲間と自転車で遠くまで出かけて自主練をした頃に比べると、何か足りない。
結局大学に入っても「ラクして楽しむ癖」は抜けなくて、バイトにサークル、お酒もたくさん飲んで騒いで就活して。あっという間に4年間を消費してしまいました。
そして、卒業を目前に控えた現在、「桐島、部活辞めるってよ」を読んでやっと気づきました。
私が失ってしまったのは"熱中"だったんだ、と。
ボサボサの眉毛で、メンソレータムのリップを塗ったくった唇を噛みしめて、必死にシャトルを追いかけていた頃の私は、きっと今より輝いていました。
あの頃みたいに「自分の好き」を貫けなくなったのは、いつからだろう。どうしてだろう。
その後数日は悶々としました。
最後に
とまぁ、自分語りはこの辺で…。
きっと、「桐島、部活辞めるってよ」を読むと、その人それぞれに違う感想を抱くんじゃないかな、と思います。
とにかく、熱中することを忘れてしまった大人(予備軍かな)にはなんかこう、クるものがある作品です。
青春もの、と片付けるにはもったいない。
映画はみたよ!という人はぜひ、小説も読んでみてください。
人物ごとに章が分かれていますが、時間軸は一緒なので「あぁ、この時、こんなことが起きてたのね」ってなったり。プチ複線回収が鏤められていて面白いです。え、その時そんなこと思ってたの?みたいな。
このあらすじ・内容を読んで少しでも「桐島、部活辞めるってよ」を読んでみようかな、と思っていただければ幸いです。
悪魔(「谷崎潤一郎フェティシズム小説集」より)/谷崎潤一郎のあらすじ・ネタバレ・感想
登場人物
佐伯謙:東京の大学へ通うために名古屋の叔母のもとへ上京してきた若者。気が小さく、病的な気質を持つ。 叔母:小太りでおしゃべりな女性。 照子:佐伯のいとこ。叔母のもとに住む一人娘。 鈴木:叔母のもとに暮らす書生の男。陰険で低能と揶揄される。
あらすじ
人混み、電車、人。 あらゆるものへの恐怖に支配された男・佐伯の、禁断のフェティシズムを描いた物語。
内容・ネタバレ
佐伯は幾度も下車しながら、なんとか東京の叔母のもとへたどり着いた。 叔母のもとには従妹の照子と、書生の鈴木、女中のお雪が暮らしている。 照子は、度々佐伯の部屋へやってきては、他愛ない話をして帰っていく。 書生の鈴木というのは、陰気で気味の悪い男で、照子のことを好いているようであった。
ある日の晩、唐突に書生の鈴木が佐伯の部屋にやってきて 「あの女は猫を被っている」 「多くの男と関係を持っている、以前は自分とも関係があった」 など、照子の本性について語った。叔母と照子、女中が帰ってくると、「何卒今日の話は内分に願います。」と部屋を出て行ってしまった。 鈴木が去った1時間程後に叔母がやってきて、今日鈴木が部屋に来なかったか、と尋ねた。叔母は鈴木を良く思っておらず、一度鈴木をクビにして追い出した時には、刃物を持って家の周りをうろつかれたことなどを佐伯に話した。佐伯は聞かれるままに、質問に対して正直に全てを話してしまう。
翌日、鈴木は叔母に全て話してしまった佐伯を責め、二度と口を聞かないと言い捨てる。佐伯は「俺にも魔物が取り憑いた」と思い、いつか自分があいつに殺されてしまうかもしれないと言う恐怖に取り憑かれてしまう。
後日、風邪気味の照子がハンカチを持って佐伯のもとにやってきて、鈴木について「心配の必要はない」と話した。 照子が出て行った後、女中のお雪が照子のハンカチを探しにやってきた。結局、照子が忘れたハンカチは見当たらず、探しあぐねて部屋を出て行った。
女中のお雪が降りて行ったことを確認すると、佐伯は布団の下から"照子のハンカチ"を取り出した。 そしてそのハンカチを開いて、ハンカチに付着した鼻水を弄んだり舐めたりした。 それからも、そのハンカチを懐に忍ばせて大学の便所でそのハンカチの汚れを楽しんだ。ハンカチはいつの間にか綺麗に黄色くひあがって、突張ってしまった。
その後も、照子は頻繁に佐伯の部屋へやってきた。 佐伯は、照子の来訪のたびに、あの快楽がバレてしまったのではないかと怯えていた。 また同時に、「照子の淫婦奴!」と怒声を浴びせたくなったり、「いくら誘惑したって、降参なんかするものか。おれにはあいつにも鈴木にも知れないような、秘密な楽園があるんだ。」と負け惜しみを言って、せせら笑うような気持ちになったりしていた。
感想
内容について
最初に言っておきましょう。この「悪魔」、超ド級の気持ち悪さです。 谷崎潤一郎の小説の中でもかなりハードめなフェティシズムを描いています。
最初は過度に神経質な男性の日常描写にすぎません。あらゆるものが恐ろしく、恐怖を紛らわすために酒を飲みタバコを吸う。時折部屋にやってくる従妹の照子の魅力に惑わされそうになりつつ抗う、普通の(?)学生。 終始佐伯は、照子の魅力に骨抜きにされてバカになってしまった鈴木を見下しています。自分は違う、と言い聞かせているようにも見えます。
とまぁ、本編の7・8割はそんな感じで、「フェティシズム…?」となります。ところが突然、本当に突然、めちゃくちゃ気持ち悪い。 何度も読み返してしまう急展開、そして何度読んでも気持ち悪い。苦虫を噛みつぶしたような表情になってしまうほど鮮明な描写がつらつらと続きます。 ここまで、「あれ?フェティシズムなんて言っておいて、そうでもないな」なんて思っていたからこそ、落差にやられます。
鈴木が終始キモいやつとして描かれていましたが、思わぬ大どんでん返しに虜になってしまう人もいるかも知れません…。とりあえず食前食中に読むのはお勧めしません。。。
佐伯について
臆病で神経質、そして超級の性癖を持った男・佐伯。 他人の鼻水を舐めたり…考えただけで気分が悪くなるような気さえしますが… そう言った行為に興奮する人がいるんだ…と圧倒されます。
ビクビク怯えながらハンカチについた汚れを楽しむシーンは、一切共感はできないものの描写が細かくてハラハラします。
題名「悪魔」について
この物語は、"禁断の快楽"と言う悪魔に取り憑かれた男の物語です。 佐伯にとっては、照子や鈴木と言う存在が悪魔であり、恐怖の対象となっています。
特に照子は魔性の女ですね。 湯上りの色っぽい姿で佐伯の部屋にやってきたり、あざとい。 佐伯はそんな誘惑に抗いながらもだんだんと魅了されていきます。 本編は佐伯視点で描かれているので、照子に対する佐伯の描写が本当に滑稽です。佐伯にとって、照子はほんとに魅力的なんですね。本人はなんとしても認めまいとしています。
まとめ
何度も言います。「悪魔」は完全自己責任で読んでください(笑) 谷崎ファンとしては、「悪魔」は外せない名作ですが、好き嫌いのかなり別れる作品だと思います。描写のうまさゆえに…って感じですね。 かなり短編かつ、会話文も多くなかなか読みやすいので、心に余裕のある時に読んでみることをお勧めします!読んだ後は太陽の光を浴びて欲しい(?)
これを知ってると一気に通ぶれる「悪魔」。気になった方は(完全自己責任で)どうぞ!
刺青/谷崎潤一郎のあらすじ・ネタバレ・感想
登場人物
清吉:元浮世絵師。現在は若手人気刺青師(ほりものし)。 娘:ある日清吉のもとへ使いとしてやってきた少女。
あらすじ
平和の続く江戸では、美しいものが強く、醜いものは弱者であった。その当時、より美しい刺青を入れることが人々のステータスとなっていた。 刺青師の中でも、その描く絵の妖艶さに定評のある人気刺青師・清吉は、人々の苦痛で歪む表情が大好きな生粋のサディストであった。そんな彼は、いつか自分の思い描く美しい体を持つ女に、自らの手で刺青を施すことを夢見ていた。
内容・ネタバレ
平和な時代が続く江戸では、見た目の美しい者が強者であり、醜い者は弱者出会った。その当時、人々はより美しい刺青を入れることがステータスであり、刺青を刺す痛みに耐え、自らの体に美しい絵柄を入れた。 当時、特に名を馳せた刺青師の中に清吉と言う男がいた。彼は元浮世絵師で、「奇警な構図と妖艶な線」を描く優秀な刺青師であった。一方で清吉は変わった癖を持っていて、刺青を入れる痛みに悶える、あるいは耐える人たちの苦痛に歪む表情を見るのが大好きであった。 そんな清吉には「いつか自分の思い描く美しい女の肌に自分の手で刺青を施したい」と言う野望を抱いていた。 ある日清吉が道を歩いていると、駕籠の中から外へ投げ出されたいっとう美しい足が見えた。清吉は、あの美しい足を持つ女性こそ、自分が求めた女に違いないと思いその駕籠を追いかけるもしばらくして見えなくなってしまった。 それから5年たったある春の日、清吉のもとへ見知らぬ少女が訪ねてきた。その娘こそ、5年前に見たあの美しい足の持ち主であった。 清吉はその娘に、男たちをたぶらかしてあしらう悪女の絵を見せ、「お前はこの絵の女になれる素質を持っている」と諭した。自らの隠している性分を言い当てられた娘は、その絵から目を背けて拒絶した。 清吉は薬でその娘を眠らせると、眠っている間に、その娘の背中に大きなクモの刺青を入れた。 目が覚めた時には、その娘は自らの性分を恐れることもなくなり、強くはっきりとした物言いをするようになった。 娘の背中には、清吉によって施されたクモが美しくきらめき輝いていた。
感想
突然ですが、私は中学生の頃、刺青にものすごく憧れていました。 肩のところにBLE○CHの三番隊の模様(漢数字の3と、金盞花)を入れたくて、早く大人になりたいと夢見ていました。 ちょうどその頃ですね。私が自分の携帯を持たされたのは。それで、「まだ早いけど、刺青の予習をしよう!」と思い刺青について調べました。 そこで見たのは、十数本の針がくっついた機械(?)のようなもので肌をぶっ刺す画像でした。もう衝撃的すぎて、綺麗な竜や鯉の模様なんて頭に入りません…。 しかも後になって知ったのですが、刺青があると、温泉やプールに行けないんですね。。。(理由は意味不明すぎるけど) 温泉大好きな私にとって、温泉に行けなくなることはは死活問題です。と言うわけでやむなく刺青は断念。(尤もその2年後にはBLEA○Hにも飽きてしまっていましたが…)
長くなりましたが、何を言いたかったのかと言うと、刺青はマジで、めちゃくちゃ痛いらしいです。 わかりやすく説明すると、刺青は表皮の下に針で刺して墨を入れるわけなので、そりゃ痛いに決まっています…。 他の人が刺青を施されている画像でさえ「痛〜〜〜っ!!!」となってしまう私からすれば、「刺青」の清吉は本物の人でなしです。
清吉のサディズム
この小説の主人公にして、生粋のサディストである清吉。 彼の性癖的には刺青師はまさに天職です。浮世絵師だった頃はいったいこの性癖をどう解消していたんだろう…考えるだけでゾッとします。 しかしこの男は、サディストの域を超えてまさに狂人です。 「屈強な男の顔が苦痛で歪む様に何とも言えぬ喜びを覚える」的な描写でお察しのキモさが、とうとうこいつ犯罪に手を染めちゃったよ、って感じです。自分好みの女を見つけて軟禁して(後に別の使いがやってきて娘の行方を尋ねますが、ずいぶん前に帰ったよ、なんて平然と嘘をつきます、こわ)勝手に刺青を入れるなんて…不思議性癖すぎて怖い。 しかもその女の背中に施したのはでっかいクモ。話しの流れ的には「女郎蜘蛛」でしょうか…いや泣くわ。目が覚めて背中痛くて、見たらでっかいクモの刺青でしょ?きっつぅ…
そうして、プチ軟禁の果てに、清吉は自分の思い描く「女王様」を自らの手で生み出しました。 思うに、清吉のサディズムは少し入り組んでいますね。 勉強不足ゆえ、彼のこの性癖が何と言うジャンルに類するのかは不明です。今度また異常性癖については何かしらの本を読んで勉強しておきます…。 乏しい知識で推測するに、清吉はより強いもの/猛々しいものが弱っている状況にただならぬ興奮を覚えるタイプなのではないかと思います。
実際、男性に刺青を施す場合、その人が痛みで苦しむ顔に喜びを覚え、我慢している男には「これからもっと痛いですよ…」と変な脅しまがいの ことをしている、と言う描写があります。 一方で、娘に刺青を施した際には、その娘が「痛がって弱っているところを見られたくないわ」と言うと、あっさり引きます。
男性、特に強い人の弱った表情がイイんでしょうか…わからん…。
たくさんの男たちをたぶらかし弄ぶ"女王様"像が彼の中にあり、その権化があの娘だったのでしょう。
娘のサディズム
この娘の名前は本編中では明らかになっていません。そのため、娘と呼ぶことにします。 この娘はある意味、清吉の狂気に巻き込まれた(ある意味)被害者です。 初め、清吉に「君はSの素質がある!」と唆された際には「確かにそう言う性分ではあるが、ほっといて欲しい。」と制止します。エスっぽいところはあるけど、女王様願望はない、と。
しかしその後、背中に施されたクモが暴き出すかのように、娘はその本性を明らかにしていきます。
目が覚めて湯に浸かる際、刺青の痛みに苦しむ姿を見られたくないから、と清吉を室外に追い出してしまいます。言い方も、強さを感じさせます。
こうして、娘はすっかり清吉の思い描く女王様になってしまいました。最後には、「お前も私の肥やしだ」と清吉に言い放つなど、、、清吉をしのぐSっ気を発揮。 きっとこれから、この娘は本能のままに男を虜にして弄ぶんだろうと。そしてその様を見て、清吉は興奮するんだろうと。 何とも不思議な関係です。
まとめ
谷崎潤一郎の「刺青」では、サディストについて描かれています。 谷崎の作品にはマゾヒストに焦点を当てた物語が多いぶん、この物語は少し異色かもしれません。
「刺青」は「痴人の愛」・「卍」に並ぶ有名作品です。比較的短くて文体も読みやすいので、谷崎初心者さんにおすすめです! あらすじを読んで少しでも興味を持った方はぜひ読んでみてください。
他の特殊性癖に興味がある方は以下の記事もぜひ読んでください。新しい扉を開けてしまっても自己責任でお願いします。 (谷崎特殊性癖小説のレビューのリンク予定地)
痴人の愛/谷崎潤一郎のあらすじ・ネタバレ・感想
「恋は盲目」って、たぶんこのこと。
登場人物
河合譲治:ナオミと出会った当時は28歳。真面目な性格の、一般的なサラリーマン。
奈緒美(ナオミ):カフェの給仕女。譲治と出会った当時15歳。わがままで奔放。西洋風の容姿を持つ。
浜田(浜ちゃん):ナオミの男友達。
熊谷(まアちゃん):ナオミの男友達。
あらすじ
真面目な普通のサラリーマン・河合譲治は、浅草のカフェ店員のナオミと出会う。ナオミの容姿に魅了された譲治は、熱烈なアプローチの末、直美を妻としてもらうことになる。
しかし結婚してからナオミの我儘は増していき、河合の給料ではナオミの我儘をかなえることができなくなってしまう。独身時代に貯めていた貯金を切り崩して生活を送る中、「ナオミらしき女性が男と出かけていた」と言う情報が河合の耳に入って、ナオミの本性が明らかになっていく。
内容・ネタバレ
28歳のごく普通のサラリーマン・河合譲治は、カフェで働く美しい女性に一目惚れをする。その女性はナオミと言う15歳の少女で、学校に行きたいと思いながらもカフェに給仕として働かされていた。
譲治はナオミとデートを重ね、ある日「僕と一緒に暮らそう。君のやりたいことをなんでもやらせてあげるよ。」と告げた。するとナオミはあっさり承諾し、一緒に住むようになる。
その後、ナオミに英語と音楽の先生をつけ、譲治の自宅で一緒に生活をする。
ナオミは非常に我儘で飽きっぽい性格で、服も一度着ると飽きてしまって、新しいのを仕立てて欲しいと譲治にねだるほどだった。それでも譲治はナオミの美しさにありとあらゆる我儘を許し、独身時代の貯金を切り崩しながらナオミの要望を叶えていた。
ナオミが16歳になった頃、ナオミと譲治は男女の関係となり、いよいよ結婚して籍を入れる。
夫婦となった2人はある時、ナオミの誘いで社交ダンスを習いに行くようになる。なかなか上達しない譲治だったが、ナオミはダンスパーティに出たいと駄々をこね始める。
ダンスパーティのためナオミの高い着物を新調し、ダンスパーティに参加したが、そこでのナオミの乱暴な振る舞いに譲治は幻滅してしまう。ナオミは、友人の浜田や熊谷と同じような言葉遣いで話し、他の女性を口汚く罵り、あれだけ習っている英語もいざとなると全く話せなかったのである。譲治は情けなくなり、帰りの電車ではろくに口もきかないのであった。
その後もダンスに行くたびにナオミの乱暴さにゲンナリしてしまう譲治だったが、それでも一晩もたてばまたいつものようにナオミが愛おしくなるのだった。
ある日ナオミがまた突然、「鎌倉で1ヶ月ほど過ごしたい」と言い始める。譲治はその頃すでに金もなかったためその願いを退けようとしたが、「知り合いの別荘があり、そこに住むことができる。譲治さんは電車で会社に通えばいい」とナオミに言いくるめられ、2人で鎌倉に旅行に出る。
そんなある日、譲治が帰宅してもナオミがまだ戻っていなかった。宿のかみさんに尋ねると「熊谷と言う友人と一緒に別荘に行ってしまった。」と言った。
譲治は嫌な予感がし、熊谷の別荘にナオミを迎えに行くとそこでは裸にマント1枚だけ羽織ったナオミと、4、5人の男が浜辺で何やら大騒ぎをしていた。
譲治はナオミを連れ帰り、着るものを全て取り上げて家から出られないようにしてしまった。翌日譲治は東京の自宅に戻り、ナオミの私物を漁って浮気の証拠を探そうとしていた。
すると東京の自宅に浜田が現れる。浜田は家の鍵を持っており、「この家で頻繁にナオミと逢瀬をしていた」と白状する。
さらに浜田は、ナオミが熊谷とも関係を持っていることも明らかにした。
譲治は浜田に感謝を伝えると、鎌倉の方へと戻り、ナオミを問い詰めた。するとナオミはあっさりと白状した上で、もう浮気はしないと約束をした。
その後東京に戻ってすぐに、譲治は熊谷とナオミの浮気現場をはっきりと目撃してしまい、ナオミを追い出す。
しかしその数日後、譲治はナオミを失った悲しさに、ナオミの行方を探し始める。
浜田に聞いたところ、ナオミは最近男を5・6人連れてダンスパーティに参加し、色々な男のところを転々としていることが明らかになった。
その後すぐに、ナオミはふらっと家に帰ってきては、「荷物を取りにきた」と言って毎晩少しずつ荷物を持って何処かへ行ってしまう。
ある日ナオミは突然「産毛を剃ってくれ」と譲治にお願いする。最中、譲治はナオミの美しい肌に我慢ができなくなり「ナオミの言うことをなんでも聞くから、戻ってきて欲しい」と言ってしまう。
ナオミはしめた、と言わんばかりに「欲しいものはなんでも買うこと」・「自分のやることに干渉しないこと」・「男と遊ぶことに文句を言わない」などと約束を言いつける。
その後2人は夫婦に戻ったが、ナオミは相変わらず金遣いが荒く、他の男とも関係を持ち続け、譲治はそれを容認するしかなかった。
譲治は、「私自身は、ナオミに惚れているのですから、どう思われても仕方がありません。」と最後に綴っている。
感想
谷崎の文体
まず初めに断っておくと、私は谷崎潤一郎が近代作家の中で最も好きですが、谷崎の小説はかなり読みづらいと思っています。とにかく読むのにすごく時間がかかります。
情景描写が多く、人物描写や心情描写はその中に織り込まれているので迂闊に読み飛ばすこともできません。会話文も少ないので、見開き1ページぎっしり文字が詰まっていることもしばしば…。
谷崎潤一郎はとにかくすごい細かい性格の人だったのかな、なんて思います。
まあ、ものすごく端的に言うと谷崎の表現方法は私からすれば、(ちょっと)うざったいわけです。
このように谷崎の小説は読みづらいです。それでも私は谷崎潤一郎が大好きです。
谷崎の描く恋愛
なぜ私がここまで谷崎を愛してやまないのか。それは、谷崎の描く恋愛が絶妙に気持ち悪くて、ゾッとする、その感覚がクセになるからなんです。
谷崎潤一郎マゾヒズム小説集・谷崎潤一郎フェティシズム小説集なんてのもあります。こちらは特殊性癖オンパレードです。今後レビューしていきます!
そんな、やばい小説もたくさんある中で「痴人の愛」は割とライトな方です。おじさんがタイプな女の子に貢ぎまくって、浮気されても結局愛してしまう、ありがち(?)なお話しです。
「痴人の愛」について
本当に、同じ女として、ナオミの我儘っぷりはかなり腹立たしいです。譲治さんを馬にして遊んだり、高い服をぐちゃぐちゃにほっぽり出して足蹴にしてしまったり。我儘放題です。
そして、それでもナオミを愛してしまう譲治さんもまたちょっとむかつきます。
譲治さんがとうとう、実家にお金を送って欲しい、と頼んだりし始めた時には「うわぁ本物の馬鹿じゃん…」と呆れてしまいました。
しかし出会った当初、ナオミは15歳だったと言うことは、この我儘放題の性格はもしかすると譲治さんのせいなのかも、とか思わずにはいられませんでした。自業自得と言いますか、何やら残念な育て方をしてしまっていたのではないかと思います。
ただ、そんな腹立たしい魔性の女・ナオミもかなり小賢しい訳です。英語の覚えはすこぶる悪いのに、悪知恵と言うか、男を手玉にとるのはうまい。
ほんと、めちゃくちゃ嫌いなタイプな女です。
そんな女に騙されて、それでも尚愛し続ける愛の深さ…。譲治さんの揺れ動く心に、ちょっと同情と言うか、「まぁ、わかんなくはない、かもな」なんて思ってしまう場面も。
結局顔かよ!って感じもありますが…。
おわりに
これを読んで思ったことは、「恋は盲目だな。」ってことでしょうか。
私が譲二さんの知り合いだったら、「目ぇ覚ませばかー!」で一発ビンタですね。ナオミに関してはどうしようもない。関わりたくもないタイプの女ですよ。
超絶ビ○チと、そんな女に恋してしまった普通のおじさんの恋愛模様、覗いてみたいと思ってみた方はぜひ、読んでみてください。